2025年の春に渋谷で開催された「半・分解展」にお邪魔してきました。
今回の目玉(?)は個人的には、「死のエメラルド」。合成染料として、その毒性を知られる以前に一世を風靡し、人の命を奪ったと考えられている、いわゆる「ヒ素」系の染料が使われた品々です。



合成染料といえばモーヴが有名ですが、17世紀から19世紀はたくさんの染料が「合成」によって生まれた時代です。ヒ素を使った鮮やかなエメラルドグリーンはそれまでのくすんだグリーンとは一線を画す鮮やかさで当時の大トレンドになり、絵の顔料だけでなく、壁紙や衣類の染料としても使われたのですね。
……ご存じの方も少なくないとは思うのですが、実は、「緑」というのは、天然の染めでは非常に発色しづらい色なのです。今では銅で媒染することで緑色を出すことができますが、昔の人はアルミと鉄しか使っていなかったそうなので、おそらく鮮やかな緑というのは、出すのが本当に難しい色だったはず。
先日見に行った志村ふくみさんの展示では、青で染めてから黄色で染める(逆だったかも……)というように重ねて染めることで、淡いグリーンを表現されていましたが、簡単なことではなさそうでした。
そんな中、簡単に、目の醒めるような鮮やかなグリーンに染められる染料が誕生したら……。危険性をしらなければ、飛びついてしまうだろうことは想像に難くありません。






ヒ素系グリーンの染料で有名なのは「パリ・グリーン」と、「シェーレ・グリーン」と呼ばれたものでしょうか。日本には「花緑青」という美しい名前で日本画の染料として入ってきたようです。本当に美しいグリーンで、印象派のゴッホやゴーギャンの絵にも、この花緑青を使ったものが少なくないとか……。
……ちなみにこの染料、アメリカでは殺虫剤・殺鼠剤として大活躍したという話。手に入りやすい殺傷力の高い農薬として、この農薬で毒殺や自殺を試みたケースまであったとか。
しかし、こんなに危険な染料なのに、危険性を指摘されてからその認識が広がるまでには、50年近く掛かったというのですから、よっぽど流行ったのでしょうね。この染料が原因と思われる奇病が流行り、実際にこの染料で中毒死したと確定する人が出るようになってようやく禁止されたらしいのですが、その後もしばらく使われ続けたそうな。
美しさの裏側の、なんとも恐ろしいお話です。
(ちなみに、アンティークの品物を買うときには緑色の染料が使われているものに気をつけましょう、と本に書いてあるのを見かけたことがあります。廃棄されずに残っているエメラルドグリーンが、まだまだあるようです……)
……さて、怖い話はここまで。
今回はドレスなどのパーツの細かいところをたっぷり見て楽しんできましたので、お写真でお裾分けです!





































