Blog

ムンクに牡丹

Date : 2019-02-03

1月も後半に差し掛かる頃ですが、上野の東京都美術館で開催されていた、ムンク展に行ってきました。
もう少し早い日程で行く予定だったのですが、友人とお互い風邪をひいたりなんだりで延期となり……、実現したのは展示の最終日となってしまい。
案の定、というかなんというか、11時頃に美術館にたどり着いたら、なんと入場90分待ちでした。
……最終日とは言え、ムンク、大人気ですね。

館内を出て公園にはみ出す長蛇の列よ……

ムンク展

さて、そんなムンク展ですが。
「やばい……」と小さく呟き続けてしまいました。このゾッと胃に来る感じは、ダリ展以来。
なんと言えばよいのでしょう。色使い、筆使い、モチーフ……、そういった物すべてが、不安を掻き立てるというか、落ち着いている精神を揺さぶりにかかってくるというか。
特に、彼が若い内の作品ほど、その傾向が顕著のような気がしました。

私が持っていたムンクについての知識はごくふんわりとしたもので、それは、彼が狂信的とも言えるほど信仰の篤い父を持ち、幼少の頃に母親を、少年の頃に姉を亡くし、自身も度々精神を患ったらしい、という程度のものでした。それが、精神的に少々危うかった原因であろうと分析されているらしい、ということも。

でも、そこから生み出された作品を実際に目にすると、その危うさ、不安定さ、しかしそれを絵として昇華して振り切ろうとするエネルギー、そういったものを感じて、どう捉えていいものやら、分からなくなってしまうのです。
――見ているだけでだんだん自分も不安な気分になってきて、良くも悪くもドキドキしてしまいました。

ムンクっぽくないよく晴れた空。そして折れてる青コーン

叫び

さて、一番の目玉であるムンクの『叫び』ですが……。
ちょっと自分でも意外だったのですが、彼の作品群の中で『叫び』は、割と安定している絵に見えました。叫ぶ人の表情はそれはもう絶望に満ちてはいますけれども、他の絵よりもバランスも整っていて、色使いも豊かなのです。
――ようするに、子供の頃にこの絵を知って、『ムンクの叫びごっこ』(笑)をした、あの迫力とは、ちょっと違うように思えたのです。

……これはあとから調べてから考えたことなのですが、わたしがこう感じたのはおそらく、今回来ていた『叫び』が、『四枚目の「叫び」』だからなのじゃないかな、と思います。
ムンクは、ゴッホの『ひまわり』のように、生涯に4枚の『叫び』を描いているのですが、今回来ていた『叫び』はその「四番目」のものなのです。時期としては、2年ほどのうちに描かれた1~3枚目から、10年以上経って描かれたもの。いわゆる「セルフリメイク」なのでしょうか……。

10数年前の自分を振り返り、見つめ直したようなその年月が、わたしの感じた謎の「安定」の正体だったのかもしれないですね。

冬牡丹

ムンク展にすっかり疲れ(並んだことで身体が疲れたこともありますが、どちらかというとフラフラした心がぐったりした、という感じでした)、館内で美味しいフレンチを食べることでようやく回復したので(東京都美術館には精養軒のフレンチレストランが入っています。ちょっとお高いけどすごく上品な空間です)、初詣に行こうということになりました。
……同行の友人は初詣済みだったのですが、年末年始と風邪を引き、ほとんど家を出られなかったので、初詣に行けていなかったのです。

最近の美術館・博物館ランチって昔よりずいぶん美味しくなってません?

そんなわけで、最も近い上野の東照宮を目指したら、何ということでしょう。見事な冬牡丹の季節ではありませんか!
東照宮の牡丹園は一度も入ったことがなかったのですが、せっかくだから見ましょうか、という話になり、足を踏み入れたら――そこから先はもう、夢中でした。

満開のものも、過ぎたものも、これからのものもふんだんに堪能できるという、素晴らしい日で……。次から次へと現れる美しい花びらに、テンションは急上昇。大変単純なことに、ムンクでどんよりした魂が一瞬で全回復です。
……ムンクが牡丹を見たら、どういう反応をしたでしょうね。

スマフォのカメラではありますけれども、あまりにも目に楽しかったので、少々おすそ分け。

あ、もちろん、東照宮にもちゃんとお参りいたしましたよ。
その後、ちょっとだけ足を伸ばして、不忍池の弁天様にもお参りしました。月が大変美しい晩でしたね。

スマートフォンのデジタルズームなのでちょいと貧弱ではありますが……
スーパー・ブラッド・ウルフムーン前日の、美しい月でした

……こんな感じで、2019年の美術館・博物館めぐりが始まりました。
去年は結構いろいろ行けた(ルーベンス、フェルメール、刀剣、世界を変えた書物展、ジョジョ展、ミキモトのパール展、ルーブル展、エッシャー、ショーメ展、ニフレル、アンティークレース、アラビアの道、仁和寺の仏展……あれ、10より多かったしなにか抜けてるかも……)ので、今年も昨年+1くらいを目指して、あちこち見に行きたいなあ、と思います。
……とりあえず、トプカプ宮殿展には、行きます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA