これも去年の秋のこと。
その日は銀座近くで用事があったのですが、ちょっと待ち時間ができたので、その時銀座でやっていた小展示を2つほど見てきました。銀座は企業が持っている小さなギャラリーがたくさんあって、その企業に関連のあるものやイメージにあうアーティストなどの展示を色々とやっています。
ひとつ目はCHANELのギャラリーで開催されていた、無人のヴェルサイユ宮殿をモノクロで撮影したもの。
In Praise of Shadows という、森田恭通さんという方の展示です。寡聞にして存じ上げなかったのですが、インテリアデザイナーとして知られている方だそう。
なんだか不思議なのですが、モノクロ、そして人がいない光と影だけが映ったヴェルサイユ宮殿からは、かつて人が暮らしていた気配……不思議な生活感のようなものを感じました。色鮮やかな色彩や青空などを取りのけると、手すりや壁の小さな傷など、人のつけた痕が目に入るようになるからかも知れません。
ちょっと不気味で、不思議と温度のある、美しい写真の数々でした。
さて、もうひとつの方はミキモトのギャラリーで展示されていた、マリア・カラスの衣装展です。
華やかな衣装、愛らしいミニドレスにすてきなリゾートドレスなど。こちらはヴェルサイユの写真と一転、鮮やかで美しいドレスたちです。こちらの展示はもちろん、装飾品が真珠。その光沢の美しさも、見る目を楽しませてくれます。
見ている人が一番集まっていたのは、マリア・カラスの人生、彼女の愛の成就と破綻のショートムービーでした。情熱的、とはこういうことを言うのねと、見ている私のため息は止まらず。ドキリとしたり胸を痛めたり、それでも美しく舞台に立つ姿に胸を打たれたり。彼女の愛は激しくも哀しいものだったようです。
コンパクトな展示、2つ。どちらもとっても良かったです。
街中で時間を潰すときのみならず、こういうのを目的に出掛けるのもいいな、と思った秋の日だったのでした。