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熊野古道と発売日

Date : 2016-11-13

ゆえです。

ひと月以上前のことですが、熊野古道に行ってきた思い出です。

書籍版、『指輪の選んだ婚約者』の発売日当日。要するに9月30日。
わたくし、朝七時の新幹線に乗り込んで、一路名古屋へと向かっておりました。
目的地は名古屋よりさらに先、『熊野古道』と呼ばれる地域周辺でございます。
2泊3日のうろうろ旅です。

いにしえの時代から人々の祈りの道だったという熊野古道。
平安の世には行幸も行われ、けっして緩やかでない道を、平安の旅装束で貴族たちが歩いた道です。
……いやー、世界遺産登録されてから、1回行ってみたかったのですよね〜。

名古屋で友達と合流し、特急に乗って、更に四時間。
美味しいぶどうを頂いたり、駅弁を食べたり、こそっとビール飲んだり。
海に歓声を上げたりしながらの移動はまさに旅情! というやつで。
久しぶりに『楽しい移動時間』を過ごしました。

■初日。
まず向かったのは、那智大社へ向かう参道だった『大門坂』と那智大社、それから那智の滝です。
移動に時間がかかったので、時間の猶予があまりなくてドキドキ。
事前に写真でみた通りの杉並木と石段が現れて、テンションはうなぎのぼり。
しかし、気温も久々に上がり、雨上がりの影響で足元ツルツル、湿度たっぷり。
そしてどこまでも続く石階段。
なかなかキツい坂でありました。

登りきったぞー! と思ったらその先はずっと急な階段の続く参道。
すれ違うマダムやジェントルマン達が「先はまだ結構あるわよ~」「がんばって~」とお声がけ下さいました。
もう半笑い。どこまで続くのこの坂。
……しかし登りきった先の那智大社、青岸渡寺、那智の滝は最高でした。
那智大社ではおみくじが大吉でして! 発売日に大吉とはこりゃあ縁起がいいぞと!
ひとりでテンションうなぎのぼり。

那智の滝も、平日+時間が夕方に差し掛かっていたためにガラガラで。
滔々と落ちる瀑布をのんびりまったりと堪能することができました。
……滝、いいよね。ちょう、すずしいし。

■二日目。
那智の滝からはちょっと離れたところに宿泊しておりまして。
熊野古道を数時間歩いて熊野大社に向かうという、最も一般的(らしい)初心者コースへ挑むことに。
宿の人にバス停まで送ってもらい、バス停からバスで一時間ちょっと、発心門王子から歩きます。
外国のお客さんがものすご~く多くて、ちょっとびっくり。

発心門王子から歩き始めたところで、ひとりで来ているという女性の方と一緒になりまして。
三人で熊野大社を目指すことになったのですが……

初心者向け、一番平易なくらいのコースですよ、とあった割に結構、道が、厳しい。
3時間ほど、登ったり降りたり車道を通ったり集落を抜けたり、眺めはどんどん変わって楽しいのですが……、
気温が上がり、連日の長雨は何だったのだと言うくらいに晴れ、湿度も高いし……何より、運動不足!

きっと運動不足であっただろう平安貴族の疲労困憊にシンクロできる、と思わず思いました。
たぶん、平安の頃はもっと道も悪かったでしょうし、装束も色々と邪魔なところがあったでしょうし、文官的立ち位置の人たちには、ほんときつい道だったんじゃないかと思うのですよね……。
行幸の担当者になってしまった藤原定家が「やっとここまできたもう何があっても戻してくれるなほんとしんどい」みたいな歌を残した気持ち、わかります。
たどり着いて自失してしまった、という逸話もあるらしいですけど、その心情、ホント分かります。
あの道+お偉方の安全+イベント完遂、とかどう考えても魂の底から『お疲れ様でした!』ですよ。

さて、古い時代の道が残してあるあたりは、延々に続く杉並木と羊歯の道なのですが、かつて熊野大社があったところ(川の中州だそう。そりゃ流されますわ……)を見下ろせる場所が何箇所かありました。
そのうちの一つに、和泉式部のエピソードの残っている場所がありまして、つめたーい、しそジュースを飲むことができるのです。
とってもとっても、身にしみて美味しかった!

そうそう、和泉式部は、なんでも、やっと大社が見えるぞ~ という所まで来て、月の障りになってしまったんだとか。
月の障り=穢れ、という発想になるので、月経中の女性は参拝できないところが多かったそうなのです。
せっかくここまで来たのにまじつらい、みたいな歌が残っているそうです。
……しかし彼女、その歌を読んだ晩に夢のお告げで「そんなの気にしないからいらっしゃい」と熊野様のお声を聞いたそうで、無事参拝できたそう。
それで、熊野大社さまは、昔から女人禁制でない、おおらかな神様として広く伝わっている、と聞きました。

この日の宿は湯の峰温泉……からちょっと離れたところ。
でも湯の峰温泉と歩いて20分も離れていないくらいでしたので、少しの時間でしたが、湯の峰温泉をウロウロしてきました。
湯の峰温泉は開湯1800年(!)の古くからある温泉地。一遍上人や小栗判官の伝説のあるところです。
世界遺産に認定されている温泉「壺湯」は3時間待ちだったので入れませんでしたが、温泉で卵を茹でて食べたりして、これまた楽しい場所でした。
またの機会があれば、壺湯周辺のお宿に泊まって壺湯にアタックしてみたいですね。

ところで紀伊半島、ご飯も美味しく温泉も心地よく、山歩き以外のところもなかなか素敵でした。
伊勢海老は甘くて鮎は子持ちで食前酒は梅酒でデザートはみかん! 完璧です。
最後のお宿は朝が、温泉で炊いたお粥でして、それもまた素敵でした。びばおんせん。

■三日目。
今日は帰るのみ! なのですが、朝早くから温泉に浸かったり、速玉大社を覗いて梛の葉っぱをもらったり。

どこまでも続く海を見てトンビにビビったり、きれいな石を拾ったり、足はガクガクながらのんびりしたり。

帰りの新幹線までの間に名古屋で更にお友達と合流してゲーチス様を見たりしてきました。

……最終日にはもう、体ガッタガタでしたけど、超充実! の良い旅でした。
あれこれとリサーチ不足だったところもありましたが、行き当たりばったり的なものも、それはそれで楽しく。
景色もあちこちダイナミックで、素晴らしかったです。
……またの機会があるならばできれば冬に、高野山の方面に行きたいな。

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