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ガブリエル・シャネル展

Date : 2022-08-20

三菱一号館美術館で開催中の「ガブリエル・シャネル展」に行ってきました!

子どもの頃から19世紀ヨーロッパの衣服に興味があって、指輪シリーズを書き始めてからその傾向はいや増しているのですが、最近になって、20世紀の女性の衣服の変遷なんかにも興味が湧くようになりました。

18世紀とか19世紀も、女性のドレスには数年単位での流行があって、袖が大きくなったり襟ぐりが深くなったり浅くなったり、腰が絞られたりシルエットが変わったり、面白い変化がたくさんあるのですけれど、20世紀のそれはびっくりするほど丈が短くなったり逆に伸びたり、パンツスタイルが出現したりとちょっとびっくりするぐらい、大きく形が変わるんですよね。世界規模で発生するようになった戦争や、その後の社会の変化が影響しているのでしょうけれども、単純にその変化は見ていて飽きない、面白さがあります。

……というわけで、20世紀の女性のファッションを語る上では外せない、と言われているシャネルの展示を見に行ったわけです。

シャネル、と言われてわたしが思い浮かべるのは、あのCとCを反転したマークを重ねたロゴとか、No.5の香水とか、キルティングされた黒い皮にロゴマークの付いた持ち手がチェーンのバッグとか、保護者会とかでご婦人方が来ているツイードのジャケットとスカートのツーピースとか、そういう「シャネルのアイコン」的なものと(残念ながらわたし自身にはほとんど縁の無いアイテムです)、ココ・シャネルという人物の、ちょっと伝説めいた伝記です。

シャネルの生涯はわりと有名なお話しかと思うので割愛しますけれど、そうした「伝説」に気をとられて、彼女の「功績」的な部分については軽く見ていたところがあったかもしれない……と、今回の展示を見て感じました。

美しい人ですよね。
ちなみに、晩年の写真も美しくて可愛いおばあちゃんでした。

展示の構成は、彼女が考案したあのスーツを時代別に見られたり、様々な当時のセレブのためにシャネルが作った「ブラックドレス」やコートが並べられていたり、一見おとなしめな(と今のわたしから見れば見えますけれど、当時としては相当革新的だったと思う)スーツと併せて身にまとう絢爛豪華な「コスチュームジュエリー」をまとめて見られたり、No5.というちょっと伝説的な香水の誕生秘話や当初のパッケージ(当時の感覚からすると驚くほどシンプルだったのではないかしら)などの展示を通して、シャネルという人が20世紀を通じて表現してきた「女性のファッション」の歴史をたどる事ができるものです。

細かい話は省きますけれど、わたしが一番感じ入ったのは、1920年代(百年程前ですよ……)に発表されたブラックドレスのシルエットがすでに、21世紀の現代の女性達が着ていてもさほど違和感のないシンプルな形をしていることと、1950年代(70年前……!)に発表したスーツが、現代の女性達が着ているスーツとほとんど変わりが無いことでした。1910年頃のドレスを見ると、まだ19世紀の名残が多分にあるのに。1920年過ぎにシャネルが制作したドレスは、2020年代に着ても全然「古く見えないだろうな」と思えるデザインなんですよ。

それに、「ブラックドレス」というのも発明であったらしいです。黒一色、というのはそれまでは、要するに喪服の色であって、華やかな場にはそぐわないとされていたモノを、黒の、けれど美しい刺しゅうやレースをふんだんに用いることで、「暗くない黒」のドレスをつくり、そして流行らせたのですね。戦争の多い時代が後押ししたところもあるのかもしれないですけれど、それってとってもすごい事のように思います。

シャネルのあのツイードのスーツも、生まれた時点のデザインですでに、今のツイードジャケットとほとんど変わりが無いのです。むしろ、大量生産の既製品でない、その人に合わせて作られているという分、洗練されているかもしれません。50年経っても「いいもの」と思われる形を最初から作っている、というのは驚くべきことではないでしょうか。(そういえば最近、オーバーサイズでのシャネルのジャケット風のカーディガンやジャケットがちょっと流行ってますよね。今の若い女性が受け入れてるの、やっぱりすごいと思う)

ちなみに、シャネルのスーツは、ツイードの布の端である「耳」の部分のフリンジをアクセントとして、襟ぐりとか前身頃の合わせとか裾とか、そういうところに使っていたらしいのですが、それも彼女の発案だとか。なおわたしは、「あそこ、耳だったのか。発想、天才か?」と思いました。(あまりにも今更)洋服のファッション史において、「シャネル以前・以後」と呼ばれるだけの事はあるなあ、としみじみ感じてしまいました……。


……思わず語り過ぎちゃった。
当時の社会背景とか、第一次・第二次世界大戦の影響とか、そうしたことを考え始めると切りが無いので、今回はこの辺りで。

見終わった後、何か服が縫いたくなりました。そんな気持ちを後押しするかのように、ミュージアムショップではお裁縫道具やビンテージボタンやリボンが売られているんですよ……! ついつい買ってしまいます。お安くないのに。危険。でもうれしい。

シャネルが好きな方だけでなく、お洋服が好きな方、洋裁が趣味の方にもおすすめです。よろしければ是非!(ちなみに、オーディオガイドは無料なのですが、スマフォにインストールするアプリ型なので、イヤホンが必須です。オーディオガイドがないと説明がほとんどないところも結構ありますので、イヤホン持って行くのがおすすめです)

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