これは春の最中、桜が散る頃に行った、国立西洋美術館での展示です。
私はいつも、博物館・美術館仲間とふたりで出かける事が多いのですが、この時はスケジュールの都合で、久しぶりにひとり観覧をしました。
この展示は「ブルターニュ地方」にスポットライトを当てた絵画展。19~20世紀前半のフランスにまつわる画家達が、ブルターニュという地方をどう見ていたか、というのがテーマとなっています。
さて、ブルターニュ地方とは、フランスのイギリスに近い辺り、海に突き出している地域です。モンサンミッシェル(はノルマンディー地方らしいですけれども)のある辺りから、更に西側ですね。パリからはちょっと離れています。(パリからモンサンミッシェルまで、電車とバスで3時間くらい掛かったので、4~5時間かかる地域と考えるといいのかも)
この辺りは当時(19世紀後半)のパリ市民から見ると、古き時代の暮らしや祭り、風物が残り、都市化著しいパリとは全く違った原始的なものが今なお息づいている地域、という認識だったそう。要するに、当時の都会の洗練や画一に嫌気がさした芸術家達が求めた、田舎の原風景が色濃く残っている地域だったのでしょう。その荒々しさや生々しさに目をつけた芸術家達が、パリを脱出して向かうようになったのだとか。
彼らの描いた絵や写真、紀行文などが広まると、今度は観光の地となっていったようですが、そうした先人達の作品を見た画家達――フランス国外から絵を学びに行った留学生達や、彼らに影響を受けて絵を描き始めた世代の人々――が次々にブルターニュ地方へと向かい、展覧会タイトルに有るような『憧憬の地』となったそう。
……というわけで。彼らの描いたブルターニュ地方の絵画を年代別に見つめ、彼の地がどのように捉えられたか、当時はどのような地だったか、捉えられ方がどう変わっていったのか……といったことを楽しむ展示でした。絵画の展覧会でこうした切り口ってちょっと珍しいと思うのですが、大変楽しかったです。
そしてここも、作品には寄りますが、撮影OKの絵画がたくさん!
勿論フラッシュは駄目なのですが、心揺さぶられた絵を思い出だけでなく残しておけるのは、とても嬉しいことですね。……というわけで、またまた写真でその雰囲気をお裾分けします。