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古代メキシコ展

Date : 2023-11-27

こんにちは、茉雪です。

2023年は美術館・博物館にたくさん行ったのですが、Instagramに写真を投稿したら満足してしまって、文字ではほとんど記録をしていませんでした。年の瀬の足音が聞こえてきた先日、「そういえば今年は何回博物館に行ったかな?」と指折り数えた時に、面白い展示をたくさん見たなあと色々思い出しましたので、年内の内にいくつか、記事として残そうと思います。

……というわけで。
まずは今年の夏にトーハクで開催されていた、「古代メキシコ」展から。

サブタイトルは「祈り、畏れ、捧げた。」。
マヤ、アステカ、テオティワカンの3つの文明に焦点を当てた、古代メキシコの遺物を通じて当時の文化や人々の生き方を探る特別展です。

センシティブなお年頃に、世界の神話や古代文明にちょっとでもかぶれた事のある人ならば、きっと馴染み深い、古代のメキシコ。創作物のソースとしても珍しくはありませんし、有名な「心臓を捧げる台」や「敗者が生け贄となる競技」など、どきっとさせられる血なまぐさい儀式などの話を聞いたことがある、という人は多いのではないでしょうか。私もそんな例に漏れず、少女時代に神話や儀式の逸話を知って、震え上がりつつも好奇心に胸を鳴らしていたものでした。

……でも今になって思ったのです。センセーショナルな儀式の事は覚えているけれど、詳しいことはあんまり知らないぞ、と。おそらく儀式の話を聞いたときに多少なりとも触れたはずなのですが、インパクトの強い事だけ記憶していて、地域や時代、当時の信仰などについてはあまり記憶に残っていませんでした。

と、言うわけで。ン十年前の記憶のアップデートも兼ねて出かけた古代メキシコ展。
これがかなりボリューミー、充実の展示内容でした。本当にたくさんの土器や土偶、石像などが来日していて、当時の人々の暮らしや信仰の一端を覗かせてくれます。目玉となる展示は「赤の女王」の翡翠のマスクなのですが、他の展示もどっさりと来ていて、たっぷり古代を浴びました……。

まだ素朴な「オルメカ文明」の、トウモロコシの神やジャガーの神。整然と美しい宗教都市である「ティオティワカン」の見事な神殿、その周辺から発掘された生け贄達の副葬品。ユーモラスでどこか愛らしい「マヤ文明」の土偶たちや、造形の見事な「赤の女王」のマスク。

これが「赤の女王」のマスク(とその他諸々装飾品)。展示スペースが個室?のようになっていたのですが、運良く自分しかいないタイミングがありまして、じっくり見られました。女王、と愛称されていますが、実際には王妃のマスクであろうとされているそうです。

――そして、「アステカ」へ。
この写真は等身大と言われる「鷲の戦士」の像ですが、王直属の戦士か、戦場で死した戦士の魂を模していると言われているそうです。
はじめはおそらく、過酷な自然環境への恐れやそれをもたらすであろう神への畏れから捧げる事になったのだろう「命」。それが段々、生け贄を捧げる事は「政策」となって、戦争の捕虜を捧げるようになった……という、ちょっとぞっとする話を横目に次々に現れる「生け贄」にまつわる展示品を見ていると、一番怖いのは結局人間なのかも……という気分になったりしました。

ちなみにアステカの首都「テノチティトラン」。私は勝手に「今は滅びた湖上の古代都市」というイメージでいたのですが、その廃墟の上に立てられたのが今の首都である「メキシコシティ」なのですね。古代の首都の上に今の首都があると知り、古代古代と言うけれど、現代と地続きで繋がっているんだなあ、と初めて気がついたのでした。

――こういう、「当たり前の事なのに気づいていなかった」ことに気づく瞬間が、すごく楽しい。

ところで、これは個人的な感想なのですが、古代メキシコの皆さん、造形が、すっごく上手い。旨く言えないのですが、モチーフの図形化やデフォルメ具合が、何とも言えず良い感じだなと思います。ほどよく単純化されていて、味があるというか……。

12月の頭まで、巡回で九州博物館に行くそうなので、もしかしたらまだ見られるかもしれません。若かりし頃、神話や儀式にそわそわした勢のみなさん、ぜひお出かけくださいませ。

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